猫背は代表的な姿勢の崩れです。
特にデスクワークの多い現代では、猫背の傾向がない人を探す方が難しいかもしれません。
猫背というと、あまり大した問題が無さそうに感じる人もいるかもしれませんが、猫背は肩こり・首こり・頭痛・眼精疲労などの様々な体の不調の原因となります。
こちらでは、猫背をパーソナルトレーニングを通して改善する方法を解説していきます。
猫背の原因とは?
猫背は背中が丸まっているので、背中に対して何かをすれば改善すると思っている人は多いと思います。
これももちろん必要なアプローチではありますが、実際に丸まった背中を反らすだけで猫背が治るかというとそんなケースはほぼありません。
猫背矯正ベルトのようなものもありますが、丸まった背中を強制的に反らせるだけではベルトを外せばまたすぐに戻ります。
猫背を治すには、まずは猫背の原因が何か分からないと対処が出来ません。
猫背の原因としては、このようなものが考えられます。
・長時間の座り姿勢
・長時間のパソコン操作
・長時間のスマホ操作
これに当てはまる人は、ほぼ全員ではないでしょうか?
全く当てはまらないという人はほぼいないと思います。
それだけに猫背の人が増えるのも当然です。
では、このような姿勢が続くとどうして猫背になるのかを解説していきます。
座った姿勢で画面をのぞき込んでいると、顔が前に出るような姿勢になりがちです。
全く顔が前に出ない状態で画面を観ることも不可能ではありませんが、時間が長くなってくると顔が前に出て前かがみになります。
人間の頭はかなり重たいので、頭の位置がずれると身体の負荷は大きくなります。
顔が前方に出ると、てこの原理で頭は前に倒れるように力が加わります。
実際にやってみると分かりますが、顔を前に出すと必ず背中は丸まります。
そして座った姿勢も正しい姿勢ならそこまで影響はありませんが、ふんぞり返るような姿勢になると同じく背中が丸まります。
これもやると分かりますが、ふんぞり返りつつ背筋を伸ばすのはできません。
これは骨盤が後傾という状態になり、骨盤と繋がっている背骨が連動して動いてしまうことで起こります。
長時間画面をのぞき込むことで、顔が前に出て背中が丸まり、長時間座ることで骨盤が傾いて背中が丸まってしまう。
このような状態が何日も長時間続けば、猫背になるのも当然です。
パーソナルトレーニングで猫背を改善する流れ
実際にパーソナルトレーニングでどのように猫背を改善するのかを解説していきます。
まずは、猫背の原因を調べないといけませんので日常生活で多い姿勢やパソコン・スマホの使用時間を伺います。
次に、目の機能や姿勢のチェックをしていきます。
目が悪すぎれば、画面を必要以上にのぞき込むので猫背になる確率は高くなります。
そして、いくら筋肉のバランスを整えてもまたすぐに戻ってしまいます。
必要最低限の視力や眼の機能はないと猫背を改善するのは厳しいです。
この場合はビジョントレーニングや眼鏡の着用、眼鏡やコンタクトの度数の変更などが必要です。
姿勢のチェックでは、猫背かどうかを判定する訳ではなく、どのように姿勢が崩れているのかを分析します。
猫背でただ背中が丸まっているだけですという人はほとんどいません。
骨盤のゆがみや、身体のねじれなどの同時に起こっていることが大半です。
姿勢をチェックして姿勢の崩れの原因が分かったら、その原因を取り除くためにストレッチやトレーニングをしていきます。
トレーニングといってもダンベルを持ったりボディビルダーみたいなトレーニングをする訳ではありません。
姿勢の崩れる原因は、ざっくりと硬すぎる筋肉があることと弱くて機能していない筋肉があることが問題です。
硬すぎる筋肉には、マッサージやストレッチ、弱くて機能していない筋肉にはトレーニングが必要です。
ヨガやピラティスでも姿勢改善になりますが、概ねヨガではこの中でストレッチの効果、ピラティスではトレーニングの効果が大きいと思います。
猫背改善の為のストレッチ
猫背改善の為のストレッチは、その人の姿勢の崩れ方によって異なります。
こちらでは、多くの方に当てはまるパターンの例を紹介します。
実際にはしっかりと姿勢チェックをした上で行うことを推奨しています。
・もも前の筋肉である腸腰筋のストレッチ
・胸の筋肉である大胸筋、小胸筋のストレッチ
この辺りは多くの人に必須の猫背改善ストレッチです。
もも前の筋肉である腸腰筋は、足の骨(大腿骨)から背骨に繋がっています。
この腸腰筋は非常に大きな太い筋肉ですので、影響が大きいです。
外からは見えない筋肉なのでピンと来ませんが、実はかなり重要な筋肉です。
腸腰筋が硬く短縮している状態だと、背骨は丸まる方向へ引っ張られます。
このような状態で背骨を反らすようなトレーニングを繰り返しても根本的には猫背の改善に繋がりません。
胸の筋肉である大胸筋、小胸筋も大きな筋肉です。小胸筋という名前ですが、実際には結構大きな筋肉です。
胸の筋肉が硬く短縮してしまうと、肩が巻き肩になります。
巻き肩になると背骨が丸まり猫背になります。
大胸筋も小胸筋も、デスクワークやスマホ操作などの身体の前での作業が長くなると固まる傾向があります。
現代人でこの大胸筋と小胸筋のストレッチが不要という人はほぼいないと思っていいでしょう。
猫背改善の為のトレーニング
トレーニングと聞くと筋トレ、マッチョみたいなイメージが持たれますが、そこまで筋肉をムキムキにするようなトレーニングは猫背改善には必要ありません。猫背に限らず、姿勢改善のトレーニングは重りはほぼ不要です。
猫背の人が弱っている、上手く機能していない筋肉をトレーニングすることで、正しい姿勢を保つことが可能になります。
こちらも姿勢チェックをしてどこの筋肉が弱いのかを調べる必要がありますが、猫背の人が大体弱っている筋肉はこちらです。
・背中の筋肉である僧帽筋
・肩甲骨周りの筋肉(菱形筋、前鋸筋など)
・お尻の筋肉(大臀筋、中殿筋など)
骨盤からゆがみが合って猫背になる場合は、多くの場合はスウェイバック姿勢と呼ばれる姿勢になっています。
スウェイバック姿勢というのは、骨盤が前方に出て筋肉ではなく靭帯で身体を支えようとする姿勢です。
この姿勢はお腹が前に出て、顔も前に出ます。
スウェイバック姿勢の人は全般的に筋肉が上手く働いておらず、特にお尻の筋肉が弱いことが多いです。
また、お腹が出る、二の腕がたるむ、二重あごになるなどの身体のたるみの原因にもなります。
このスウェイバック姿勢による猫背を改善するには、お尻のトレーニングが欠かせません。
お尻の筋肉のトレーニングで代表的なのはスクワットです。
プロレスラーがやっているイメージが強いかもしれませんが、森光子さんが毎日100回やっていたのが有名なので高齢者にも馴染みがあるかもしれません。
スクワットは正しく出来れば、猫背改善に効果的なトレーニングです。
背中の筋肉は鍛えるのが難しいですが、ぶら下がるだけでも結構鍛えられます。
昔流行ったぶら下がり健康器のような感じです。
また、おすすめは腕立て伏せです。
腕立て伏せを頭が落ちないように、背中から後頭部まで一直線に保って行うことで背中の筋肉の僧帽筋に力が入ります。
頭が落ちたら全くと言っていいほど僧帽筋には力が入りませんのでやり方は要注意です。
猫背にならない方法とは?
「猫背にならない方法はどうすればいいですか?」というのは本当によく聞かれることです。
正直現代の生活において猫背に絶対にならない方法というのは現実的に難しいと思います。
・長時間同じ姿勢でいない(1回は最長でも30分)
・座り続けない(1回は最長でも30分)
・パソコンを捨てる
・スマホを捨てる
・テレビを捨てる
・タブレットを捨てる
・毎日運動をする
・適切な睡眠時間を毎日確保
・睡眠の質を落とさない
・視力を落とさない、もしくは矯正視力で視力を出す
これくらいができたら可能かもしれませんが、不可能と思った方がいいでしょう。
私もやろうとは思いません(今まさに座ってパソコンでこの記事を書いています…)
長時間同じ姿勢で居続ける、長時間モニターを見続けるという生活をしていれば猫背になる確率は非常に高いと思います。
その為、猫背にならない方法を探すよりも「猫背になってもそれを正しい姿勢に戻せる方法を身に付ける」「猫背になりにくくする方法を身に付ける」という方が現実的です。
猫背になっても正しい姿勢に戻すには、先ほど紹介したようなストレッチやトレーニングが必要です。
猫背になりにくくする方法
猫背になりにくくする方法としては、先ほど挙げた猫背になるような生活習慣を少しでも減らすことです。
特に要注意なのが「長時間同じ姿勢でいること」と「長時間モニターを見続けること」です。
これは同時に起こります。
長時間座ってパソコン仕事をし続けると猫背になる確率は高いです。
ただし、これは多くの社会人がやっていることですし、これを辞めたら仕事を辞めることになるという人が多いでしょう。
そこでおすすめは「時間を決めて立つ」ということです。
人間の集中力は20分しか続かない、30分しか続かないなどと言われることもありますが、これは鍛えたら延びるようなものではありません。
そこで、ポモドーロテクニックという考え方があります。
ポモドーロテクニックは、25分集中して作業をしたら5分間休憩するという30分1セットで作業をすることで集中力を保ち生産性を上げようという考え方です。
この5分間の休憩で必ず立って動くということをすれば、長時間座り続けることも解消できますし集中力も続きます。
さらに、この5分間で軽いストレッチをすることで圧迫されていたお尻の筋肉が動いて血流がよくなったりという効果も期待できます。
さらにモニターを見続けたことを解消するために、眼のケアもできます。
眼のケアで有名なのが「20-20-20ルール」です。
これは
・20分画面を見続けたら
・20フィート先を
・20秒間見る
というものです。
至ってシンプルですが、近くを見続けて収縮し続けた眼の筋肉のストレッチになります。
20フィートというとピンと来ませんが、約6メートルです。
窓から遠くを見ていれば大体6メートルは超えるでしょう。
このような工夫をすることで、猫背になりにくい生活習慣となります。
(今現在この記事を書いている瞬間もポモドーロタイマーが動いていて、25分したら立ってストレッチと20-20-20をする予定です。)
猫背にならないように姿勢を意識するのは効果がある?
よく「猫背にならないように意識はしているけどどうしても戻ってしまう」ということを相談されますが、このように姿勢を意識するというのはおすすめできません。
その理由としては、そもそも意識したところで正しい姿勢になることは難しいことと、姿勢は意識をしてコントロールするものではないことがあります。
まず、姿勢が悪い人は身体の位置覚がずれています。
今自分の頭がどこにあって、身体は右にねじれているか左にねじれているかなどの感覚は、ボディマッピングとも呼ばれることもありますが、自分の身体が今どうなっているかという感覚は簡単に狂います。
その為、狂った感覚のまま「正しい姿勢」と思う姿勢をとっても意味はありません。
まずはこの身体の地図を正しい状態に戻すことが必要ですが、それには運動が必要です。
運動をしないで狂った感覚のまま正しい姿勢を意識しても、それは効果的な姿勢改善とは言えません。
次に、姿勢というのは基本的に無意識でコントロールしているものです。
姿勢がきれいな人は「骨盤と背骨と頭のラインを一直線にして…」ということを常に意識しているから姿勢がきれいな訳ではありません。
筋肉のバランスがよく、柔軟性も筋力も一定程度あり、先ほどの身体の位置覚も正しい状態になっているから姿勢がよくなります。
今姿勢が悪いなら、姿勢を意識するのではなく原因に対して効果のあるストレッチやトレーニングなどをしたり、姿勢が悪くなる習慣を排除することを頑張るべきです。
パーソナルトレーニングで猫背を改善する方法まとめ
パーソナルトレーニングで猫背を改善する方法を紹介しました。
猫背を改善する流れはこちらです。
・姿勢のチェックをする
・固まっている筋肉をストレッチやマッサージなどで緩める
・弱っている筋肉をトレーニングで鍛える(上手く使えるようにする)
・日々の姿勢のケア(ストレッチ、トレーニング、同じ姿勢で長時間いないなど)
・姿勢が悪くなる生活習慣の排除
このようなことをして猫背を改善していきます。
イメージとしては猫背を治すというよりは、猫背になっても自分ですぐ治せるようにするということです。
そしてまずは姿勢をチェックすることが大切です。
YouTubeなどで猫背に効果的なストレッチやトレーニングをやっても全然よくならなかったというなら、それはあなたの猫背の原因に対して適切なアプローチが出来ていないからです。
まずは専門家に身体を見てもらって、どんなストレッチやトレーニングが必要かを知ってから猫背改善を始めることがおすすめです。